修復に込めた想い

あの世とこの世の境目にいる番人

地蔵(欠損)施工前

地蔵(欠損)施工後

大きな霊園の正門前の土地を掘り起こした際、地中から出てきた子育地蔵尊。
石屋さんが祠を作ってその場所に安置した。
場所が場所なだけに、多くの方がお参りをされていく。
 
しかし、表の顔は将に穏やかで慈悲深いのだが、裏の顔は霊所と現世の結界を司る『閻魔大王様』なのだと教えてくれた。
 その石屋さんは、このお地蔵様が無くしてしまった錫杖の修復を長年に渡り望んでいた。
 
僣越ながら、私がそのお役目を担うことに。
やはり、どのような錫杖をお持ちだったのか全くわからないまま、作っていく。
少しサイズ感は大きかったものの、お地蔵様が持ってみると、違和感はない。
 
あれから何度もその前を通るが、年月が経過するほど、まるでもともとその錫杖は彼の持ち物であったかのように、馴染んでいる。
 
石屋さんから、一通のお手紙が届いた。
「体調不良で伏せっている折に、お告げを受けました。貴女の心のこもった修理を確かに受けた。感謝の意を伝えておくようにと。」

【施工内容】

 
地蔵様全体に付着した汚れを丁寧に除菌洗浄。
 
錫杖部など欠損部を成形し、以前に成形してあった部分と合わせて着色。
 
 
最後に、風合いの変わらない自然色仕上げのコーティングを施工して完了。